Precision instrument ≫ 関節 -7つの精密機能-
1 応力を分散させる免震機能
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はじめに
関節は筋肉の収縮によって動かされるだけの単なる連結装置」と、一般には思われています。しかし実際には目に見えない精巧なシステムを有する“超精密機械”です。Chapter.1~7の内容を全てご覧いただければ、その意味がお分かり頂けるものと思います。ベールに包まれていた“秘密の扉”が今、開かれようとしています。『関節-その神秘なる世界-』へ、ようこそ!それではごゆっくりとお楽しみください。
関節の機能の中には、建築における“耐震機能”と相似するものがいくつか存在します。人は動的構造、建物は静的構造という根本的な違いはあるものの、後者は常に“大地の震動”というリスクにさらされています。
巨大地震から建物とそこに住まう人を守るために生まれた叡知は、なんと生物進化を体現するという奇跡を生み出しているのです。ここではとくに免震機能と関節機能の類似性を紹介したいと思います。
関節は最大限リラックスしてゆるんでいるとき、わずかな外力にも関節面に“ゆらぎ”が生じます。これを医学用語で“関節の遊び”と言います。これと同じ概念が耐震工学のシステムにもあります。基礎と建物のあいだに“遊び”を設けて、そこに免震装置を組み入れるというものです。その代表的なものを以下に示します。
上記免震については
こちらのサイトの解説が分かりやすいと思います。
(1)は凹面または平面上をボールまたはローラーが転がることで、(2)は凹面または平面上を先端に丸みのある棒材がすべることで、(3)はゴムの変形によって、それぞれ揺れの加速度を減衰させます。積層ゴムは硬質ゴムと薄い鋼板を交互に張り合わせたもので「縦方向に強く、横方向には柔らかい」という変形特性を持っています。
続いて
関節包内運動(関節内部の骨の動き)と椎間板について紹介しましょう。
人間の関節はヒンジ構造にはなっていない-固定された回転軸を持たない-ので、関節内の骨は独特の動きをします。この動きは“関節包内運動”と呼ばれ、関節内部での応力を分散させることで、作用点の偏りを防ぐシステムになっています。
[1]はひざに見られる関節包内運動で、骨頭が平面上を転がります。
[2]は平面的な構造を持つ関節におこる関節包内運動で、片方の骨がスリップしたタイヤのようにすべります。
[3]の椎間板は脊柱の連結部分にあるいわばクッションです。らせん状に配列された線維組織の中に豊富なムコ多糖類を含む ゲル状の物質“髄核”が入っており、あらゆる応力に抵抗する変形特性を持っています。これはまさしく人体版の“積層ゴ ム”だと言えます。
ご覧頂いたとおり関節包内運動と免震システムはとても似ています。機能的にもほとんど違いがありません。しかも“転がり”と“すべり”に至っては、名称までまったく同じです。関節包内運動のそれは冗談ではなく本当に医学の教科書に載っている正式な名称です。1970年代に関節の研究者が報告して以来、世界中の専門家の間で常識となっているものです。
建築の免震という考え方はごく最近の話ですから、時系列で言えば関節のほうが先にこの名称を使っていたものと思われます。免震を考案した耐震工学の研究者が関節包内運動を知っていたかどうかは分かりませんが、もし知らなかったとしたらあまりに奇妙な偶然の一致です。
このように人間の連結装置には現代建築にみられる免震機能がそっくりそのまま組み込まれています。人間は関節の動きの円滑さを保持するため、建造物は地震から躯体を守るため、互いに共通するシステムを創造していたのです。本当に興味深いことだと思います。
耐震工学の研究者の方へ。
「新たな免震装置になり得るかどうか分かりませんが、ご参考までに、関節包内運動にはもう一つ“軸回旋”というものがあります」
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